市民と科学者の内部被曝問題研究会(略称:内部被曝問題研) Association for Citizens and Scientists Concerned about Internal Radiation Exposures (ACSIR)

内部被曝に重点を置いた放射線被曝の研究を、市民と科学者が協力しておこなうために、市民と科学者の内部被曝問題研究会を組織して活動を行うことを呼びかけます。

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【お知らせ】

甲状腺検査の他施設での検査拒否を依頼する検査体制に強く抗議し、早期発見・早期治療の体制を要請します

(福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター長 山下俊一殿/内部被曝問題研)

 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター長 山下俊一殿

(写し) 福島県知事 佐藤雄平殿

  

甲状腺検査の他施設での検査拒否を依頼する検査体制に強く抗議し

早期発見・早期治療の体制を要請します

201289

市民と科学者の内部被曝問題研究会理事会

理事長 沢田昭二

 

 

 原発事故の健康被害の中で、チェルノブイリ事故の教訓からまず甲状腺癌の発生が憂慮されています。こうした現状の中で、福島県立医大は甲状腺の検査を開始し、本年3月末までに38,114人の検査を行ないその結果の概要を報告しました。この結果報告では、12,460人(35.3%)が、「5.0mm以下の結節や20.0mm以下の嚢胞を認めた」とされ、「5.1mm以上の結節や20.1mm以上の嚢胞」は186人に認められ、二次検査を要するとされています。この発育期の小児(15歳以下)・若年者としての所見検出率は異常に高いものです。

 特に「結節」は充実性の部分を有するものであり、良性の腺腫の可能性もあるが、悪性腫瘍の可能性は否定できず、細胞診検査も行わず、「おおむね良性」という不審な表現で報告され、がんの専門医とは言えない医療内容となっています。

 小児の甲状腺癌は極めて稀な疾患であり、日本の小児において嚢胞や結節がどの程度の頻度で有するかに関しては医学的なデータは皆無ですが、高頻度に検出された所見が異常かどうかの検証には、被曝していないと考えられる遠隔地(北海道や九州)の数百人の小児のエコー検査を行ない比較すれば結論は出るものであり、医学的な検証方法も理解していないと言わざるを得ません。エコー検査は肉体に侵襲を与えるものでもなく、またX線検査と異なり健康被害をもたらす危険性はない検査であり、比較データを作成するエコー検査に協力者を集めることにより、現在得られた嚢胞や結節の異常な頻度が通常の小児において見られるものであるかどうかの検証が可能となります。

 しかし、この検査を指揮している貴殿、山下俊一福島県立医大副学長は日本甲状腺学会の会員メールを通じて、他施設で甲状腺の検査を希望して受診しても検査を断るように要請して、患者の医療を受ける権利を侵害し、データの独占的把握を行おうとしており、これはもはや犯罪といえます。

 2007年に成立した「がん対策基本法」に基づき国を上げてがん検診を勧めているにもかかわらず検診を拒否するように働きかける姿勢は論外であり、また不安に駆られて自費ででも甲状腺の検査を希望している人達に、検査拒否を呼び掛ける姿勢は、医師としての最低限の節度や倫理観も欠落していると言わざるを得ません。ここに他施設での甲状腺検査の拒否体制を作り上げた貴殿に怒りを持って抗議します。
 同時に、多くの医療機関・医師は貴殿の要請に応じて、検査拒否を行っていますが、その様な基本的人権を無視した、「医の横暴」を行うことは許されません。直ちに不当な検査・診療拒否はやめなければなりません。
 その上貴殿は、「20歳に至るまで、検査は2年ごと」としています。子どものがんの進展は一般に大変早いものであり、予防医学的な立場からも、「早期発見・早期治療」が原則です。それにも拘らず、2年という指示は長すぎて、子どもの健康被害を拡大する恐れがあります。ベラルーシの子供のがんはチェルノブイリ事故の翌年に早くも増加を示していることなどを考慮すれば、甲状腺検査で何らかの所見が得られた子供に関しては、少なくとも1年に1回は検査する実施体制を敷かなければなりません。また医学的に小児の定義は15歳までとされていますが、10代の子供は数年間しか経過観察の対象とならないことを考慮する必要があり、「20歳に至るまで」ではなく、「最低20年間」とすべきです。さらに、非常に広範な地域に放射性微粒子が降り注いだことを考慮すると、同様の甲状腺症状が全国に展開している可能性があります。福島県民に限らず、全ての国民・市民に対して、無料で医療機関を受診できる保障を行うべきです。
 「東京電力原子力事故により被災した子供をはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援に関する施策の推進に関する法律」(通称、原発事故子ども・被災者支援法)第13条にも明記されているように「少なくとも、子どもである間に一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある者(胎児である間にその母が当該地域に居住していた者を含む)およびこれに準ずる者に係る健康診断については、それらの者の生涯にわたって実施されることとなるよう必要な措置が講ぜられるものとすること(第13条二)。さらに三には、「・・・医療を受けたときに負担すべき費用についてその負担を減免するために・・必要な措置を講ずるものとすること」と、上記のことに関して、医慮に係る施策として明記されています。上記の第13条二に記述されている「一定の基準以上の放射線量が計測される地域」には、日本では、通常の公衆の年間被曝量が「1 mSv 以下」と定められており、チェルノブイリ周辺3ヶ国が「移住権利」の汚染ゾーンとして定めている住民保護基準に準じて、年間1 mSv とすべきであることを要求いたします。

 この法の精神にのっとり、国は子どもの無料検診・無料治療制度を一刻も早く確立することを要請いたします。

 日本甲状腺学会所属の医師たちはもちろん全ての医師が、医の良心に従い、市民の健康管理・発病予防を誠実に市民の健康に生きる権利を擁護しなければなりません。

 また、医療記録は医師法24条により診療録(いわゆるカルテ)は5年間の保存義務が課されています。また診療録以外の病院日誌、処方箋、手術記録、エックス線写真等は、医療法21条により、2年間の保存義務が課されています。今回の超音波検査(エコー検査)はエックス線写真等に属する医療記録であり2年間の保存義務があります。しかしエコー検査画像は被験者にも見せもせず、印刷画像も渡していません。現在の検査は、甲状腺癌が発生する可能性を考慮して比較データとして有益なものとなります。今後数十年間の画像を福島県立医大で保存することは全く担保されておらず、また被験者は移住したりして全員が福島県に在住するわけではありません。こうした状況を考慮すれば、検査データを本人に渡し、将来どの地域で生活していても経過観察の比較資料として保管しなければなりません。そもそも医療データは本人に所属するものであり、検査機関のものではありません。今回の対応は時代錯誤も甚だしいものであるといわざるをえません。エコー検査画像は10秒以下で印刷できることから、検査機関での保管用と本人分を印刷し、一部は本人に渡さなければなりません。将来、被験者がどこに住もうが数十年にわたる経過観察に際し比較資料として本人が保管することが必要であり、その権利も有しています。このままでは不都合な証拠は廃棄されたりする可能性があります。

 今後の検査においては、採血データと印刷したエコー画像を被験者にも渡すという最低限の誠意を示すことを切に望みます。

 
これらにかんがみ、貴殿に次の要請を致しますので、回答を求めます。

要請1:甲状腺その他の検査結果(血液検査・甲状腺エコー画像等)を被験者本人または保護者に渡すこと。

要請2:検査のデータはエコー画像を含めて、健康管理センターが長期保管すること。

要請3:比較データのための甲状腺エコー検査を放射線汚染の低い地域で実施すること。

要請4:医療機関・医師による検査拒否を促す24116日付け、日本甲状腺学会宛の文書を撤回し、県内外における被災者の医療・検査拒否を行わない旨の文書を日本甲状腺学会に送付し、特に県内で周知徹底すること。

要請5:「早期発見」「早期治療」のため、甲状腺検査で何らかの所見が得られた子供に関しては、少なくとも1年に1回検査すること。

以上

 上記要請へのご回答は、平成24915日までに下記あてにご送付ください。
 なお本抗議・要請文と貴殿の回答はマスメディアに送付いたします。

 

                                                        市民と科学者の内部被曝問題研究会

                                                          理事長 沢田昭二

                                                          連絡先:〒325-0302栃木県那須町高久丙407-9-97

田代真人 気付 TELFAX: 028-776-3601

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