市民と科学者の内部被曝問題研究会(略称:内部被曝問題研) Association for Citizens and Scientists Concerned about Internal Radiation Exposures (ACSIR)

内部被曝に重点を置いた放射線被曝の研究を、市民と科学者が協力しておこなうために、市民と科学者の内部被曝問題研究会を組織して活動を行うことを呼びかけます。

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「大飯原発再稼働を野田佳彦首相の責任で決める道理は全くありません」

~野田首相の原発再稼働に向けた発言を糾弾する~

市民と科学者の内部被曝問題研究会

「大飯原発再稼働を野田佳彦首相の責任で決める道理は全くありません」

 201262

 市民と科学者の内部被曝問題研究会

  (略称:内部被曝問題研)

  理事長 澤田昭二

 530日、政府は、大飯原発34号機(福井県おおい町)の再稼働について関係閣僚会合を開催し、野田佳彦首相が、「福井県とおおい町の判断が得られれば、関係閣僚会合で論議し、私の責任で判断する」と述べたと報道されています。しかし、首相の言う「私の責任」とは何を意味するのでしょうか。

 昨年1216日、首相は「冷温停止状態」になったとして原発事故の「収束宣言」を発しました。しかし、福島第一原発の過酷事故後の実態をみれば、大多数の市民は首相の「収束宣言」が根拠のないものであることを知っています。そんな首相が「私の責任」でと表明されても、再稼働について全権を委ねることが出来ますか。今や、市民の願いの第一は、「脱原発」であり、子どもたちの命と暮らしを守るために全原発の「終息宣言」なのです。

 しかも、530日、細野豪志原発担当相は、関西広域連合(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、徳島県、大阪市、堺市)の首長たちへの説明において、安全性確認のためのストレステスト結果などの評価に対する「政府の判断基準は暫定的」なものであることと、原発の運転状況を常時監視する「特別な監視体制」を敷くことを表明しました。すなわち、原発の「安全も暫定」という認識(橋下徹大阪市長)であり、「特別な監視体制」は経産省の副大臣や政務官がその任に当たるということですから、安全の担保には全くなりません。それにもかかわらず、関西広域連合は再稼働を事実上容認しました。これは、再稼働を進めるための中央政府と関係地方政府の功利的利害の一致の結果であり、脱原発を願う市民の思いとの乖離はその極に達しています。

 一方、福島第一原発の過酷事故の原因究明は、昨年1226日、政府の東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(畑村洋太郎委員長・東京大学名誉教授)が「中間報告」を発表しましたが、核心的な原因究明は何らなされておらず、今年の「夏頃に最終報告を取りまとめて公表したい」ということです。また、国会の福島原発事故調査委員会(黒川清委員長・前日本学術会議会長)は、「行政組織の在り方の見直し」を含めて提言を行うとして事故当時の政府・地方自治体・東電などの関係者たちの事情聴取を進めているところであり、事情聴取の様子が逐次報道されているという段階です。

 そもそも、再稼働に向けての政府の「暫定的な判断基準」は、政界、官僚、財界、学界、マスメディアからなる原発利益共同体と共に「安全神話」を吹聴して原発を推進してきた結果、福島第一原発の過酷事故を招来させた張本人である原子力安全委員会や原子力安全・保安院が決めたものであり、安全を担保するものでは決してありません。

 したがって、首相が「私の責任で判断する」ことが許される状況ではまったくありません。

 さらに、原点に立ち返って原発の安全性を考えれば、第一に事故が無くても過酷な労働条件に置かれ被曝を余儀なくされる原発作業員の人権蹂躙があります。第二に「トイレの無いマンション」と比喩されるとおり、高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料)の最終処分方法がまったく未解決のままに進められてきたのが原発ですから、この問題の解決法を示さない限り原発は安全とは言えません。第三に福島第一原発の1号機から4号機の廃炉は決まっていますが、使用中の核燃料がメルトダウンあるいはメルトスルーしている13号機の原形を留めない核燃料と、4号機の使用済み核燃料プールに大量の瓦礫と共に収まる夥しい数の核燃料棒(実際には核燃料集合体)を如何に安全に処理するかは、世界的にも初めての作業であり、長年月にわたり大きな危険が伴います。

 本来、原発のような巨大システムほど、いくら科学の粋を結集したとしても技術的には安全には程遠い代物ですから、安全の上にも安全を第一優先して「原発は危険極まりない巨大システムである」という大前提で臨まなければなりません。しかしながら、野田内閣と関西広域連合の首長たちの安直な再稼働容認姿勢は、人びとの平和な暮らし、子どもたちの明るい未来を、最大限に保障する義務のある為政者の採るべき施策とはまったく相容れない無責任極まるものです。

 私たち市民と科学者の内部被曝問題研究会は、満腔の怒りを込めて野田首相の再稼働に向けた発言を糾弾するとともに、大飯原発をはじめとする全国の原発の再稼動を絶対に行わないことを強く要求します。

以上

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